このたび、特別展「第29回平櫛田中賞受賞記念 岩間弘展―翼のあるものたち―」を開催します。
岩間弘(1956~)は富山県出身で、金沢美術工芸大学で彫刻を学びました。卒業後は、新制作協会展を中心に作品を発表しつつ、野外彫刻シンポジウムにも積極的に参加しています。
岩間の彫刻は木、石、ブロンズ、鉄と4種の素材を用い、ときには1種の素材のみで、ときには組み合わせつつ、常に新しい「形」を追求し続けています。その卓越した空間意識によって作られた作品の数々は、私たちに確かな創造の営みを伝えてくれるものです。
美術評論家の酒井忠康氏は、岩間の彫刻を「ダイナミックで実験的な作品を制作し、構築的で緊張感のあるフォルムをもっているのが特長です。一見すると、じつに不愛想な作品ですが、作者自身の内省的世界のなかに育まれた宇宙観のようなものを感知すると、その瞬間に作品の表情はがらりと変わります。ある種の詩的世界へと変容するからなのでしょうね。相応しい形容かどうかはともかく、彫刻の仕組みが、見る人を宇宙へと誘うことになるからです」と賞賛の言葉で評しています。
本展覧会では、これまで制作した作品から木をメインとした彫刻を中心に、魅力的な大理石小品も加えた74点で岩間弘の芸術を紹介いたします。作者がその創造世界を「人間は飛べないからこそ気持ちが高まる。高揚した精神が創作意欲につながる」と語る、「飛翔」をキーワードとしてお楽しみいただければ幸いです。