昭和初期に活躍した宇城市出身の写真家、河野浅八(こうのあさはち)の作品をご紹介します。1876年熊本県宇土郡大見村(現宇城市不知火町大見)に生まれた河野は、20代で単身渡米し、ロサンゼルスで写真材料店を営みながら写真技術を学びました。写真展に出品するようになると、アメリカのみならず、イギリス、フランスなど各国の展覧会でも受賞を重ねます。当時のニューヨークタイムズ誌には、世界の写真家と並んで河野の作品が紹介されており、その華々しい受賞歴がうかがえます。なかでも、1932年、放射線状に広がる蓮を写した《Pond Fantasy》がイギリスのロイヤルサロンで第1席に選ばれ、高い評価を受けました。1934年に帰郷した後は、在熊の写真家に熱望されて後進の指導にあたり、66歳でその生涯を閉じました。
河野の写真は、整然とした画面の中にも明暗のグラデーションが非常に豊かで心象的な表現が伝わります。作品の多くは風景写真ですが、絶妙な構図に、光と影が生み出す形の面白さが加わり、どれも見る人を惹きつけてやみません。
今回の展覧会では、河野自身が焼き付けたオリジナルプリント約60点と、残されたネガをデジタル処理して仕上げた作品を展示します。