不世出の文人篆刻家
山田正平(1899~1962)は新潟市出身の篆刻家です。篆刻とは石や木などの材料に文字を刻して印章を作成することで、古くから詩・書・画と共に文人がたしなむ芸術の一つとされてきました。そして、その仕事は「方寸(※約3㎝四方)の世界に宇宙を宿す」とも称されます。
正平は14歳のころ、會津八一に刻印の才能を見込まれ、印の制作を依頼されたことから知遇を得ました。八一は正平を「天才」と絶賛し、友人たちに印の購入を勧め、自身も多くの印を依頼しています。また、正平が当時の日本篆刻界の第一人者だった山田寒山の養嗣子になる際にも尽力したといいます。このような八一の応援もあり、正平は大成し、豪放磊落な独自の篆刻の世界を創出しました。そして、正平の印は、八一だけでなく小川芋銭、堀口大學、棟方志功、中川一政ら多くの文士・書家・芸術家たちにも愛されました。
正平は、篆刻以外にも書画や刻字などでもその才を発揮し、文人らしい数々の名品を残しています。また、晩年は日展審査員や東京学芸大学講師になるなど、後進の育成にも取り組みました。
本展では、正平の篆刻や書画・刻字、八一との親交を示す作品資料を中心に、新潟県内に残る作品などにも焦点を当てて紹介します。