大衆の人気を集める歌舞伎役者を描く役者絵は、浮世絵の始まりから今日まで続く、最も重要なジャンルです。芝居番付や版本挿絵により高まる人々の要求に応え、元禄後期に鳥居清信(とりいきよのぶ)が特定の芝居に取材し、一枚摺版画として売り出し役者絵は誕生しました。
「ひょうたん足、みみず描き」で錦絵以前の役者絵を独占した鳥居派にはじまり、錦絵以降の勝川春章(かつかわしゅんしょう)、一筆斎文調(いっぴつさいぶんちょう)による役者の面貌を描き分ける似顔表現の登場や、寛政期に東洲斎写楽(とうしゅうさいしゃらく)による役者似顔をクローズアップした「大首絵」の流行、そして、江戸後期には、歌川派絵師らの活動でワイドスクリーン画面を表出させた続物、創意工夫を凝らした揃物など、多彩な展開が見られました。
本展では、鳥居派、勝川派、写楽、そして、幕末最大画派となった歌川派の作品をご覧いただきながら役者絵の流れを辿っていきます。また、双六形式のものや、髪型の付け替えを楽しむもの、舞台裏の楽屋での様子を描いたもの、さらには人気役者の訃報と追善を兼ねて出版された死絵と呼ばれるものなど、様々な趣向で登場する役者絵も併せてお楽しみいただきます。