「箱・器・袋」これらは全て中に物を入れたり、盛り付けたりして使うもので、いわば従属的な役割を果たす道具です。しかし使用する状況や、中に入れる物が持つ意味合いや格式などをより明確に際立たせるのも、これらの道具の特徴といえるでしょう。本展では漆の箱、やきものなどの器、そして箱・器・袋が複合した価値を持つ茶道具、さらに大名家に伝わった道具とそれらを収納する箱や袋などを、資料とあわせてご覧いただきます。
箱や器は、それ自身も工芸技術の粋を極めたものです。堆朱や螺鈿の装飾が施された食籠や、蒔絵の重箱などは調度としても用いられます茶の湯に用いる器は、多くの種類があり、季節や取り合わせなど亭主の考えを映し出します。また、こうした器を入れるための箱や、保護の為の袋も茶人の美意識のもとに誂えられています。館蔵の「瀬戸肩衝茶入 銘 淀」は何重もの箱に入り、様々な裂に包まれ、大切に伝えられています。また、箱は権威や格式をもあらわしま
す。仙台藩主伊達家に伝わった「太刀 備前長船元重」は太刀自体も名刀ですが、拵から太刀を収める刀箱に至るまで、家紋が蒔絵された絢爛豪華な細工が施されており、その美しさに目を奪われることでしょう。
当館所蔵の『平家物語絵巻』巻第7(中)「主上都落の事」では、京都から西国へと都落ちする安徳天皇と平氏の一行とともに、屋敷から運び出される三種の神器が入った唐櫃が描かれています。その唐櫃は黒漆に金蒔絵が施され、ひと目でそれとわかる豪華なもの
まで、まさに箱が中身を物語っているのです。
本展では様々な箱や器、袋をご覧いただきま
す。大きい箱か、小さな箱か、はたまた何を盛るのか入れるのか。いろいろと想像しながら、ごゆっくりとお楽しみください。