漂泊の画家とも称される竹久夢二(1884-1934)は旅をしながら日本の抒情を描き続けました。数え年の十六歳で故郷岡山を離れた夢二は、上京し画家として活躍する中で京都・長崎・会津・榛名(はるな)など様々な土地を訪れて作品の制作を行い、画会も開いています。
明治四十三(1910)年に出版した『夢二画集 旅の巻』の中で自身のことを「いつまでも、歸(かえ)るべき家も持たずに旅から旅へと流浪してゆくストレンヂアーでゐるより外(ほか)はない。」と記すほど「旅」は夢二の人生に欠かせないものでした。旅先で出会った美しい景色や出会った人々との思い出は作品となり、見る者に夢二独特の日本の旅情を伝えます。本展では、夢二が描いた日本の旅情をテーマに、各地の風景やそこに暮らす人々の姿を描いた作品をご紹介いたします。
春の特別展示として、屏風の大作で夢二が美術研究所の建設を計画した榛名山(はるなさん)と自身を描いた《遠山に寄す》と、大正七(1918)年に京都で開催された展覧会に出品された《旅の唄》を特別に公開いたします。