現代陶芸の表現が多様化する中で、人や動物などの生き物を題材にしたオブジェをつくる作家の活躍が目に留まるようになってきました。
日本において、人や動物など生き物を題材にしたやきものは、古いものでは縄文時代の土偶や古墳時代の埴輪があります。その他にも、鎌倉時代から江戸時代にかけて生産が盛んであった瀬戸の陶製狛犬、江戸時代に生産された肥前有田の磁器製の人形や備前の細工物、近代に入って「ノベルティ」としてアメリカを中心に輸出された瀬戸の陶製人形といった具合に、さまざまな時代に、それらは祈りや愛玩の対象としてつくられ続けてきました。
そして、現代においては、作家自身がイメージした世界観、あるいは純粋に好きなものをつくることを目的として生き物をモチーフに選び、土の可塑性や焼成効果に着目し、造形の面白さやリアリティーを追求する作家が多くみられるようになっています。作家自身がお気に入りの生き物をモチーフに選び、その生き物に対する愛情ともとれる思いを注ぎ込んだ作品からは、強烈な存在感が感じられます。
本展では、海洋生物をモチーフに関西で活動する今井完眞と、昆虫をモチーフに関東で活動する奥村巴菜の作品により、リアリティーとオリジナリティーが融合した表現の魅力を紹介します。