COVERという名の列車にて
ポピュラーミュージックの用語を美術の2次創作を指す用語としてタイトルとするグループ展はここで4回目になる。
COVER(カヴァー)という名の列車があるとするなら、2次創作の他の列車(例えばアプロプリエーション号)に比べれば円滑で実りある走りが期待できるのではないか。
前もってカヴァー列車だと名乗っておけば、それは正当な「再解釈」となり「二番煎じ」と揶揄されることもなく、「盗用」の誹りを受けることもない。2次創作の運行・発表は非常にスムーズに行える。
しかし美術におけるカヴァー作品に求められるのは複製品(レプリカ)をつくることではないし、オリジナル作品をBGMにカラオケを唄うことでもない。他者作品を元にするが、カヴァーをする作家のオリジナリティがそこに求められているのだ。
ここで観たいものは接続された新たな路線図であり、その継承と超克の達成である。その達成の質は各作家に委ねられている。
今回のCOVERは絵画を中心としたさまざまな展開と写真を使った動向とを並置してみることが趣旨となる。複製技術の発達した今、絵画史と写真史は対立してきた歴史観を終えて既に次の時代に入っている。
長い歴史の中でORIGINAL作品と言われるものは果たして唯一無二、真正の存在であっただろうか?ここでその背後に見える営為を透し見ても悪くはない。そしてCOVERという列車はどこかでこれからも車両と路線の接続と切断、連鎖と超克を続けて駅から駅へと走っていくだろう。
山崎亨(本展キュレーション・美術作家)