1950年代、まだ海外旅行が一般的ではなかった時代に、彫刻家・本郷新は二度にわたり異国へ旅をしました。
1952年にはウィーンで開催される世界平和会議への出席のために渡欧し、日本平和委員としてパリ、プラハ、モスクワ、レニングラードなどを訪れました。1956年には、画家の梅原龍三郎や文学者の石川達三ら日本を代表する文化人で組織されたアジア文化使節団の一員として、インド、エジプト、ギリシア、イタリア、中国など、多くの国を歴訪し、そこで目にした街並みや自然、そして人々の生きる姿を巧みなスケッチに残しました。かの地で見た風物は、本郷のその後の彫刻制作にも活かされていきます。
本展では、当館の所蔵品の中から、旅の道すがらに多数描かれた素描や、帰国後に制作された《裸婦》、《嵐の中の母子像》、《無辜の民》シリーズ等を展覧します。
本郷新は遠く異国の地で何を見て、何を得たのか。その作品から、一彫刻家の思想と創作の軌跡をたどります。