"イメージの魔術師"と呼ばれた絵本作家エロール・ル・カイン(1941-1989)。シンガポールに生まれ、幼少期をインドで過ごしたル・カインは、1956年、15歳で単身渡英、以後、イギリスを終生の活動の場としました。アニメーションを学んだのち、1968年に映画用のラフスケッチを元にした『アーサー王の剣』を出版し、夢だった絵本作家への道に踏み出すことになります。その後、『キャベツ姫』『キューピッドとプシケー』『おどる12人のおひめさま』『魔術師キャッツ』など数多くの絵本を生み出しました。東洋と西洋の美術様式が融合した幻想的な絵には、豊かな色彩があふれています。そして、細密な描写による装飾性と多様なタッチ、繊細でありながら大胆な構図の面白さなど、ル・カインが描き出す世界は魅力に満ちています。本展では、絵本のストーリーを辿りながら、絵本原画やスケッチ、資料などにより、その魔術の秘密をひも解きます。