2017年度に新たに収蔵した中馬泰文、栗本夏樹の作品を紹介します。
中馬泰文はイメージを直接描くのではなく、版という「間接技法」を表現手段として制作してきました。版画表現の定型に捉われない自由な発想で、現在も精力的に作品を発表し続けています。このたびは、ワッシャやビニールパイプなど身近な素材にインクをつけたものを版として用いる、「簡易凸版」という手法で制作された初期作の《玩具63-01》や《4コマ×64-01》、シルクスクリーンの版を同じ画面に繰り返し用いてイメージを構成した《Mr.moon》シリーズのうち4点を収蔵しました。
栗本夏樹は常に漆の新しい可能性を追求しながら制作を続けてきました。素材としての漆、漆にまつわる歴史や風土にも着目した作品は国内外で高い評価を受けています。制作活動だけでなく、漆作品の技法や修復についての普及活動も行っています。今回収蔵した《島の絵》は、一般的に連想する表面が滑らかな光沢の漆作品とは異なり、刷毛跡を敢えて残したり漆に卵白を混ぜて表面を縮めさせるなど、実験的な要素が見られる作品です。
同時開催として、「版画ことはじめ」と題し、当館の版画コレクションを特集して展示します。木版画、銅版画、リトグラフなど、それぞれの技法に着目することで版画の魅力に迫ります。