山水画は山や川などの自然風景を主題とする絵画で、見たままではなく、再構成して理想とする景色を描くのが特徴で、中国ではじまり東洋世界に広まりました。一方、西洋で人物の背景として描かれはじめた風景画は自然の再現性を重視し、特に17世紀のオランダで独立した主題となりました。その後19世紀には外光描写を原則とした印象主義が現れて大きく発展しました。
日本では古来山水画が主流で、特に中世から近世にかけて、水墨画の隆盛とともに多く描かれました。そのような中、風景の再現性を重視する真景図や名所絵も制作されるようになり、江戸時代の18世紀後半になると西洋絵画の影響を受けた洋風画が登場します。さらに、19世紀後半、明治以降は東洋絵画の伝統を引き継ぐ山水画と西洋絵画の影響を受けた風景画が描かれるとともに、双方の要素を取り入れた新たな風景表現が試みられるようになっていきます。
本展では、山水画、風景画、そしてこの二つが融合したような作品など、近・現代の日本画家が取り組んださまざまな風景表現を紹介します。