グスタフ・クリムト、エゴン・シーレを輩出した19世紀末の都市ウィーン。ハプスブルク家が治めるオーストリア=ハンガリー帝国の崩壊と世紀末の不安の中、首都ウィーンでは耽美で退廃的な輝きを放つ独自の芸術が花開きました。とりわけグラフィックの分野では、クリムトはじめ、オスカー・ココシュカ、オットー・ヴァーグナー、ヨーゼフ・ホフマン、コロマン・モーザーら、絵画、建築、デザイン等あらゆる分野の作家が活躍し、豊かな展開を見せました。彼らにとってグラフィック・アートは自らの個性を発揮しながらも、時代の動きや嗜好を敏感に反映し実験的表現を試すことのできる絶好のフィールドであったと言えるでしょう。それらは街角を飾るポスターから書斎に並ぶ本や雑誌の装丁と挿絵、カレンダーやポストカードまで、ウィーンの街を様々に彩り、人々の手に渡りました。
時代の適応し、人々に浸透したグラフィック・アートは、ウィーン世紀末芸術の特色を最もよく示しています。本展では、「ウィーン」、「書斎」、「夢」の三部構成により、リトグラフや木版画を中心とする約360点をご紹介します。デッサンやデザインスケッチも含め、多くが初公開となる本展では、当時のグラフィック作品を網羅的に見ることのできるまたとない機会となるでしょう。今見ても斬新で多彩な作品により、時代のエッセンスと個性の共演をお楽しみください。