開館20周年を迎えた茅ヶ崎市美術館では、本年度は「版の美-板にのせられたメッセージ」と題し、木版画の魅力をシリーズでお伝えしています。絵師、彫師、摺師などの分担作業によって制作されていた江戸・明治期の浮世絵版画。その後、欧米からの刺激を受けつつ「自画、自刻、自摺」を合言葉に作家自身が制作の全作業を行う個の表現性を重視し、明治末期から大正期にかけ版画の芸術作品としての位置を確固たるものとした「創作版画」。そして、更なる版画の可能性を追求しつづける現代の表現者たち。シリーズ第3弾となる本展は、茅ヶ崎市美術館が所蔵する版画作品のうち戦後から現代に至るまで制作された木版画を中心に約200点を紹介します。童画家であった武井武雄が主宰し約20年間に総勢161名が版画による年賀状交換で版の技を深めた「榛(はん)の会」や、日本版画会の創立に貢献し版画による色面表現を探求し続けた馬渕聖(まぶちとおる)、木口木版画家であり文筆など多方面で才能を発揮する柄澤齊(からさわひとし)を取り上げ、それぞれの作家が魅せる木版画の可能性を探ります。