日本近代美術史上の傑出した存在として輝き続け、その作品が今もなお多くの人々を魅了し続けている佐伯祐三(1898~1928)が、30歳の若さでパリに客死してから、今年は90年目を迎え、同時に生誕120年の記念の年ともなります。
佐伯は大阪市に生まれ、10代の頃から画家を志望して、東京美術学校(現在の東京藝術大学)で本格的に洋画を学び、卒業の後、1923(大正12)年からフランスに留学しました。かの地でモーリス・ド・ヴラマンクの教えを乞うなどして作風を確立し、1925(大正14)年のサロン・ドートンヌに出品した作品には買い手がつくまでになりますが、経済的な事情から翌年に帰国します。
帰国後まもなく、フランスで親交のあった前田寛治、里見勝蔵らによる1930年協会の結成に参加して滞欧作を発表、二科展でも滞欧作19点を特別出品して二科賞を受賞し、新進気鋭の画家として注目されますが、佐伯は国内での活動に飽き足らず、1927(昭和2)年、再びフランスに渡って制作を重ねます。しかし、翌年3月から過労と結核の症状によって病床に臥せるようになり、8月にその短い生涯が閉ざされました。
作品に生命を刻みつけるかのようにして疾走した佐伯祐三の制作を、大阪中之島美術館、和歌山県立近代美術館、田辺市立美術館のコレクションを軸にして紹介し、同時代の洋画家たちの作品とともに展観して、大正から昭和にかけて熱をおびた日本人の洋画表現を振り返ります。