岡田謙三(1902-1982)は、横浜に生まれ、ニューヨークを拠点に活躍した洋画家です。
東京美術学校を中退した岡田は、1920年代のパリに学びました。四年足らずの滞在ののちに帰国してからは、二科会を中心に作品を発表、甘美な女性群像などで人気作家となります。しかし第二次世界大戦後、より単純化された表現を模索するなかで、制作の行きづまりに悩みはじめました。
1950年(昭和25)、そうした状況を打破すべく、岡田はアメリカへと渡ります。そして、ポロックやロスコたちの抽象表現主義が席巻するニューヨークで、しだいに抽象へと転じ、淡い色彩を塗りかさねた色面を組合わせる独自の作風を確立します。岡田は、日本的な色彩感覚や自然観、伝統芸術への理解と共感に裏打ちされたみずからの表現を、「幽玄」の語をとって「ユーゲニズム」と名づけました。具象的なイメージをも喚起する、情趣あふれる抽象画の世界は、ときのアメリカ画壇のみならず、数々の国際展でも高く評価されました。
本展は、横浜美術館の所蔵品をはじめ、国内のコレクションを核にその画業を回顧するもので、アメリカの美術館から日本初公開の作品も出品されます。
(展覧会チラシより転載)