色のないガラスと色のあるガラス、古代エジプトやメソポタミアに始まるガラス工芸史の中で、まず登場するのは色のあるガラスです。一方、色のないガラスの方は、かなり時代が下り、水晶のように無色透明なガラスが最初に出現するのは、14世紀末から15世紀初めのヴェネツィアでした。
現代では、テクノロジーが進み、無色と有色のいずれのガラスも、良質で比較的加工しやすい多種多様な材料が生み出され、作品に用いられています。
そもそも、ガラスはそれ自体美しく、魅力に富んだ素材だと言えるでしょう。そのようなガラスに、さらに様々な色彩や装飾をくわえた作品がある一方で、敢えて色数を減らし、色彩による装飾的要素を抑えた表現もあります。この展覧会で取り上げる色のあるガラスというのは、後者に当たる、ほぼ一色だけのガラスの表現となります。
当展は、無色透明なガラスのみ、あるいは、単色の色ガラスのみを用いた、現代の造形作品に限定して紹介する試みです。どちらもシンプルであればこそ、作品の持つフォルムや質感、ガラスの光学的特性などがより一層際立ってきます。こうしたガラス造形の世界をこの機会に是非ご鑑賞ください。