公益財団法人常陽藝文センターでは郷土作家展シリーズ第257回として、「やまとしうるはし 武石堯展」を開催いたします。
大洗町出身の画家・武石堯は、教員になりたての若い頃に偶然訪れた奈良に魅せられ、以来毎年通いながら寺院や仏像、日本古来の物語などを題材に描いています。油彩画から始め、現在は主に和紙や綿布を貼ったパネルに膠で溶いた顔料を使い、ジャンルにとらわれず様々な手法や画材を用いて制作しています。絵の具は極力混ぜずに色を出したいという武石の画風は、重なる色彩が豊かに溢れ、奔放な筆致で自由に描くのが特長です。
武石は、旅先で出会った場所や人、寺院や仏像の復興のために個展を開催し収益を寄進するという独自のスタイルで活動してきました。平成9年に教員生活を終えると、自転車ひとつに地図、画材、スケッチブック、着替えやその日の食料を積み、灯台から灯台を巡りながらスケッチをする旅を始めました。海岸線をたどってぐるりと日本を一周し終え、舞台をイギリス、そして今はフランスへと移しています。その間にも制作発表は続けられ、平成18年には奈良の法輪寺妙見堂の格天井画を制作、平成22年には興福寺の伽藍復興協力のために個展開催と、精力的に活動しています。
「自分は他にできることがないから絵を描くのだ」と武石は言います。奈良の塔も、海を見つめる塔も人間が作った大きな建築物でありながら何百年とそこにたたずみ自然に同化して風景の一部となっています。そのような塔のたたずまいに惹かれ、武石は旅に出て描き続けます。
今展の第1会場、前期はこれまでの作品を、後期は奈良をテーマに描いた新作を展示いたします。第2会場では茨城新聞に連載している「灯台めぐり・ペダルの旅」シリーズのイギリス編とフランス編より抜粋した原画と紀行文を併せて展示いたします。(敬称略)
公益財団法人常陽藝文センター