桂盛仁(かつら もりひと)(1944生)は長年に亘り練馬区に在住し制作を続けている、人間国宝に認定された金工作家です。
江戸時代初期から続く彫金の一派、柳川派の流れを汲み、明治・大正・昭和期にかけて、煙草入れなど装身具の彫金で大人気を博した二代豊川光長(とよかわみつなが)、桂光春(みつはる)を輩出した流派で、伯父である光春を継いだのが盛仁の父、桂盛行(もりゆき)(1914~96)となります。
父、盛行のもとで修行した桂盛仁は、打ち出しや彫金、象嵌(ぞうがん)、色絵等の技法を駆使し、日本伝統工芸展などで高い評価を得てきました。宮内庁買い上げ、文化庁長官賞を受賞するなど研鑽を積み、2008年に重要無形文化財「彫金」保持者(人間国宝)に認定されています。
昨今、明治期の卓越した工芸作品を“超絶技巧”と称し、ロストテクノロジーとしての評価がなされてきていますが、そうした工芸の技術が脈々と受け継がれてきていることは、柳川派、そして桂盛仁の金工を見ると明らかです。
本展は、桂盛仁の初期から近作までを通観するとともに、桂のルーツである、盛行、そして、光長、光春の作品も併せて展示し、今に生き続ける江戸彫金の技を再認識するものです。