光のゆらめきに影が幾層にもゆらめく。刻々と変わる光に影は変化する。あまりに強い光に目がくらんだり、深い影に光を忘れたり。本来光と影は一対のものであるのに、時としてどちらかを見落としてしまってはいないだろうか。
「光」と「影」はさまざまな意味を含む言葉です。今回の展覧会は、「光と影が語ったもの」というテーマで、この光と影が錯綜する人間の営みをさまざまな観点から作品を通して浮かび上がらせました。社会の繁栄の表と裏、人間の内面に潜む心の動き、光学的な光と影…それらの表現の意味するところは深く複雑です。
コレクションより初公開のカルダー《ゴルファー(ジョン・D・ロックフェラー)》の動きにゆらめく影や、クレー《デモーニッシュなマリオネット》のドキッとする眼差しに目をとめながら、現代にもつながる忘れてはならないものを探しに来ていただけたらと思います。 江本菜穂子(企画協力)