病に苛まれながら、自己を見つめ、人間という存在と徹底的に向き合った画家・深井克美を知っていますか?
1948年3月9日に函館で生まれた深井は、幼少期の父との死別、生後間もない妹との離別を経て、東京での母子二人きりの生活を始めます。病気がちの少年期を過ごしながらも、しだいに絵画への関心を示すようになった深井は、自由美術協会で活動していた西八郎の作品に感銘して同氏に師事し、1972年に同会に初入選、翌年には異例の早さで会員に推挙されます。以後、自らの表現を模索しながら制作活動を続けますが、1978年12月16日、わずか30歳で命を絶った彼の画業は10年に満たないものでした。
緻密な点描と豊かな色彩で描いた幻想的な作品の多くには、画家の内奥に秘められた生の苦悩と悲しみが色濃く投影されています。時にグロテスクなまでの印象を与える特異な画風は、描くことへの魂の叫びが込められたものといえ、いまなお、見る者を強く惹きつけます。
生誕70年・没後40年となる2018年度、出生の地である北海道で決定版となる回顧展を開催します。本展では、深井克美の初期から絶筆までの代表作を網羅するとともに、没後5年に開催された回顧展以降の研究成果を踏まえて、彼の画業に大きな影響を与えた作家たちの作品や関連資料等も加え、描くことでしか生きられなかったひとりの画家足跡を丁寧にたどります。