明治時代を迎え、画家たちは西洋よりもたらされた油彩画の写実性に刺激され、新しい「日本の絵画」の主題や技法、その指針を模索します。大小の美術団体の結成や全国規模の公募展である文展の開設、美術ジャーナリズムの興隆など、制作環境が変化していく中で、画家それぞれが時代にふさわしい日本画を追求し、多彩な作品を生み出しました。
浮世絵で知られる水田コレクションですが、数は少ないながら代表的な画家の佳作を含む近代日本画がその一角を占めています。この度の展覧会では、浮世絵の風情を継承した鏑木清方(かぶらききよかた)、伊東深水(いとうしんすい)の美人画とともに、菱田春草(ひしだしゅんそう)、下村観山(しもむらかんざん)や前田青邨(まえだせいそん)など、新しい日本画の創造を目指し画壇をリードした画家の作品を紹介し、近代日本画の諸相をご覧いただきます。あわせて明治の浮世絵美人画特集として、最後の浮世絵師・月岡芳年(つきおかよしとし)や山本昇雲(やまもとしょううん)の木版画シリーズを展示します。