紫式部によって著された『源氏物語』は、日本の文学史上もっとも重要な作品として尊崇され、各時代を通じ読み継がれ、後世の文学をはじめ、精神・文化面でもさまざまな影響を与えてきました。これと表裏をなすように、原作が成立してさほど時を隔てずに絵画化がはじめられたとみられ、以後現在にいたるまで幾度も繰り返し描き継がれ、「源氏絵」という日本の絵画史上における重要なジャンルを形成してきました。
本展覧会では、国宝「源氏物語絵巻」や河内本の最古写本である蓬左文庫蔵本をはじめ、『源氏物語』の貴重な写本類や平安時代以来の源氏絵の系譜をたどります。
とりわけ、徳川美術館に所蔵される国宝「源氏物語絵巻」は、国庫補助金による文化財の保存修理が行われ、絵十五場面は平成二十七年に完了しましたが、その後も詞書の修復が継続して実施され、これまで八段分の詞書が完成しました。今回は修復が終わった場面と共に、来年度に修理予定の作品を併せて公開します。