岩手県北上市出身の彫刻家・照井榮(1932年―)は、石を素材に具象彫刻に長年挑んできました。彼が創りだす石彫群は、東北の風土に根ざした奥羽山脈沿いの雪深き大自然を象徴する人物像となっています。そこには北の大地が育んだ、豊かな山野とともに暮らす人々の息づかいが感じられます。
戦後まもなく盛岡に創立された岩手美術工芸学校を経て盛岡短期大学美術工芸科に学んだ照井は、上京し美術団体「新制作協会」を中心に活動を開始します。美工時代からの師であり、新制作の先輩でもある岩手出身の彫刻家・舟越保武の助手をつとめる傍ら、固い石をコツコツと刻み存在感のある人物像を数多く制作してきました。
本展は、85歳を迎えてなお旺盛な制作意欲をみせる照井榮の近作20点に加え、初期からの代表作をあわせ約40点で照井の造形性の本質に迫ります。