開館以来、山梨県立美術館では、身近な自然の美しさを主題として表現したバルビゾン派の絵画を収集・展示してきました。本展は、開館40周年記念特別展として、同派の画家シャルル=フランソワ・ドービニー(1817-1878)の画業を紹介する、国内初の展覧会となります。
大胆な筆遣い、そして時にパレットナイフを用いて表現されたドービニーの絵画は、「印象」を描いたものに過ぎない「未完成」な作品として批評家たちから揶揄される一方、眼前に広がる自然を喚起するような魅力を備えた写実主義の絵画として同時代から高い評価を得ました。
1857年以降は、アトリエを設けた船「ボタン号」で河川を旅しながら、船上で制作をおこなう独自の制作スタイルを確立します。水辺にきらめく光や、時刻とともに表情を変える空といった移ろいゆく対象を見つめる経験を通して、瑞々しい魅力に溢れた作品が生み出されました。
また後年には、サロン(官展)の審査員として、後に印象派と呼ばれる若い画家たちに成功のきっかけを与えるなど、彼らを擁護したことも知られています。最晩年まで制作旅行をおこない、自然との新たな出会いを求め、表現し続けたその画業は、モネ、そしてゴッホからも敬愛を集めました。
本展では、印象派の先駆と評されたドービニーの知られざる画業について、フランスと国内所蔵の作品によりご紹介いたします。