二十世紀、銅版画家として国際的に活躍した浜口陽三(一九〇九-二〇〇〇)の作品は、深い闇を思わせる黒を背景に、優雅にたたずむモチーフの美しさが魅力のひとつです。西瓜、さくらんぼ、蝶などは見たままに写した形ではなく、浜口が創り上げる新しい世界にうまれた生命(いのち)であるかのように描かれ、柔かな光と不思議な気配を纏(まと)っています。
目にみえない心象や象徴としての「オブジェ」なのかもしれません。その悠然とした作品世界は、時が経っても変わらずに観る者の心に強く響いてくるのです。本展では銅版画を中心に約六十点を展示します。
※オブジェ:立体物のことではありません