今回の常設展では、「絵の具」に着目し、『絵の具のひみつ』と題して、よく知られた油彩画や水彩画とは違った技法を用いた絵画表現を、大展示室でご紹介します。
絵の具は、一般には細かい色の粉末である「顔料」と、それを固着させる「展色剤」とを練り合わせて作られますが、その長い発達の歴史において、展色剤として膠(にかわ)や卵など動物性の蛋白質を用いるものや、乾性油を用いる油彩、アラビアゴムを用いる水彩、アクリル樹脂を用いるアクリル絵の具など、さまざまな絵の具が生み出されてきました。
今日では、チューブ入り絵の具の普及によって、油彩画や水彩画、アクリル画は、多くのひとが画室でも野外でも絵の具を手軽に扱えるようになりました。いっぽう、顔料を膠で溶いて描く日本の伝統的な画法や、西洋で油彩画が登場する以前から用いられていた卵テンペラの画法などでは、画家が、依然としてその都度使う分だけの絵の具を自分で調合しなければなりません。しかし、そのように手間のかかる技法では、反面で、画家が自分の表現に適したオリジナルの絵の具をつくることにより、独自の発色の加減や、テンペラのように堅牢さを追及することができるという大きな魅力があります。
『絵の具のひみつ』では、膠を用いた表現として、新潟出身の作家土田麦僊、横山操、青山亘幹、仲山計介らの作品、また、卵テンペラを用いた表現として、川口起美雄、小林裕児、鈴木力の作品を展示します。