フィンランドの美術・工芸は、1900年のパリ万国博覧会において高く評価され、世界的な注目を集めます。万博での成功は、当時ロシアからの独立を目指していた民衆に誇りと自信を抱かせて建国の原動力となり、同時に手工業の活性化を促しました。このうち陶磁器に関しては、美術工芸中央学校とアラビア製陶所を舞台に様々な試みがなされ、とりわけ1932年に同製陶所内に設立された美術部門では作家に自由な創作が許され、ユートピアともいえる環境から数々の傑作が生み出されていくこととなります。国を挙げての文化政策を背景に、フィンランドの陶芸は20世紀中期には世界的な潮流を生み出すまでに成長し、既成概念にとらわれない豊かな表現は日本の工芸界にも大きな影響を与えました。
フィンランドと日本の外交関係樹立100周年を記念して開催される本展は、日本で初めてフィンランド陶芸を体系的に紹介するもので、黎明期から最盛期ともいえる1950年代、1960年代までを名作と共に辿ります。