笠井誠一(1932~)は、札幌市に生まれ、東京と名古屋を中心に活躍してきた油彩画家です。
17歳で上京し、練馬区内に居住。都立石神井高校、阿佐ヶ谷洋画研究所夜間部に通い、1953年東京藝術大学美術学部絵画科(油画・伊藤廉教室)に入学します。絵画科卒業、専攻科修了後は同大で副手を務め、1959年フランス政府給費留学生に合格し、パリに渡りました。パリでは国立高等美術学校(エコール・デ・ボザール)のモーリス・ブリアンション教室で学びます。またサロン・ドートンヌに出品・入選し、フランス政府買い上げとなるなどの活躍も見せました。当初は人物や風景なども描いていましたが、留学中は静物画に移行し、構造的な絵作りの姿勢をとり始めます。
66年の帰国後は、愛知県立芸術大学で教鞭を執る(~1998年)と同時に、東京都八王子市にアトリエを構え、東京・愛知を往復する日々が始まりました。70年代後半より、現在につながる単純化された画面構成が固められ、また85年以降は立軌会に同人として参加しています。
笠井は、楽器や日用品などのモチーフを室内に配した、シンプルで明晰な静物画で知られていますが、本展では初期の風景画や人物画から始まり、現在までの笠井の画業を辿ると共に、アトリエで使用されているモチーフや資料など約120点から作家の緻密な構図を紐解いていきます。