●世界中で近代的な価値がゆらぎはじめ、各地で騒乱が頻発した1968年は、20世紀の転換点ともいうべき激動の年でした。日本でも、全共闘運動やベトナム反戦運動などで社会が騒然とするなか、カウンターカルチャーやアングラのような過激でエキセントリックな動向が隆盛を極めました。社会全体が高揚した雰囲気に包まれたこの時代には、現代美術をはじめ、写真・演劇・舞踏・映画・建築・デザイン・漫画などの領域においても、破壊的なエネルギーに満ちた先鋭的な試みが次々と生み出されました。学生運動やヒッピームーヴメントに代表されるような、既成の価値や体制に異議申し立てをおこなう時代の空気は、芸術家のあいだでも共有されていたのです。
●本展は、1968年からちょうど半世紀が経過した2018年の視点から、約400点の作品や資料とともにこの興味深い時代の芸術状況を、回顧しようとする試みです。この時代の芸術を輪切りにして展観することで、新たに見えてくるものがあるのではないでしょうか。今から50年前に当時の芸術に親しんだ方も、これから出会う方も、展覧会場で1968年前後の熱気を感じ取っていただければと思います。