明治150周年を記念して、企画展「明治時代の教育にみる博物学」を開催いたします。
博物学とは自然界に存在する動物、植物、鉱物を調査し、その種類、性質、分類などを研究するとともに記録する学問であり、今のように科学分野が分化する前の自然物研究の総称といえます。東洋では主に薬となる自然物を探求する学問が生まれ、これを本草(ほんそう)学と呼びました。
明治5(1872)年に「学制」が頒布されて、近代学校制度がはじまると、博物学は小学校教育の中に取り入れられました。近代科学の合理的な自然観をもとに、身近な自然を観察し、科学的な考え方を養う博物学は、動物、植物、金石(鉱物)に分科され、物理、化学、生理と並んで学校教育の中で重視されています。明治中期になると、博物学は物理、化学、生理を統合した「理科」という科目になり、科学教育の基礎を担う科目分野になりました。
展示では、江戸時代の本草学をはじめ、本草学から影響を受けた学問、博物図譜などをもとに、博物学の流れをたどります。そして、学校教育がはじまった中で見られる教育用の絵図、教科書、掛図をはじめ、博物館や博覧会事業の中で制作された博物画、家庭で学び、楽しまれたおもちゃ絵、絵双六、絵本などに見られる博物学をもとに、明治時代の教育を支えた博物学の諸相を紹介いたします。