素足でロープにつかまり滑走して描くダイナミックなアクション・ペインティングによって、絵画に新たな領域を切り開いた白髪一雄(1924-2008)。本展は、没後10年を節目として、海外でも人気が高い白髪の代表作「水滸伝豪傑シリーズ」(全108点)の中から国内の美術館所蔵作品20点を集めて紹介します。
白髪は中国の古典文学や書に関心を抱き、創作にもその影響が見られますが、特に明の時代に著された伝奇小説『水滸伝』を少年時代から愛読していました。「水滸伝豪傑シリーズ」とは、物語に登場する豪傑108人の名が題名として付けられた作品群を指し、白髪が関西を拠点とする前衛美術グループ「具体美術協会」で活躍した1950年代末から1960年代前半に描いた作品です。30代後半から40代にかけての血気盛んな白髪が渾身のエネルギーを画面にぶつけたアクション・ペインティング作品の真骨頂と言えます。同シリーズの個々の作品名は、制作した後に便宜的に付けられたものですが、物語と登場人物を熟知した白髪が題名を付けた作品の画面からは、豪傑たちのイメージを膨らませることもできるでしょう。
本展では、アクション・ペインティングによる大作群によって、白髪が愛した『水滸伝』の豪放の世界をご紹介します。