≪Self Selection Sale≫
トタン板を素材にした彫刻を作り、発表し始めてから気が付くと4半世紀が過ぎてしまった。最近故あって作業場の片付けをしているのだが段ボール箱につめ込まれ山積みになっている作品の多さに我ながら呆然とさせられてしまった。(相模原にある共同アトリエの倉庫には、その何倍もの箱が積み重ねられている!)
作家は自分の表現のために、自分の好きな物を作っていると思われがちだが(白状すると確かにそうだ。)それだけでは続けられない。
誰かのため、何かのためにと心のどこかで常に思っていないと彫刻は弱いものになってしまう。
「これは彫刻ではない。」発表の機会を終え梱包材にくるまり、箱に押し込められたトタンの物体を見ているとそう思えてならない。実際にそうである。その彫刻は空間を所有していないのだから。
彫刻家にとって一番の喜びは制作の中にあり、思い通りになるより、思いもよらない作品を作り出せた時にこそある。
彫刻のことを思うと展覧会場で空間に置かれ、存在して、人の目に触れる時、「生きている」と言える。
彫刻にとっての一番の喜びは?それはある人に所有してもらい、その人と共に空間を共有することに尽きる。
そのことは作家にとって「誰か」の存在を知ることになり、勇気を与えられ、前へ進む原動力になるのだ。