公益財団法人常陽藝文センターでは郷土作家展シリーズ第255回として、「北の人、そして風景 庄司勲展」を開催いたします。
山形県出身の洋画家・庄司勲さんは、希望していた美大進学の道が両親の反対で叶わず、一時は絵画制作から遠ざかりました。やがて茨城県で就職し本格的に絵を描き始めたのは38歳の時、同僚に誘われ土浦市内にある画塾に通うようになります。家庭を持ち経済的にも精神的にもゆとりが持てるようになってからの制作に庄司さんは夢中になりました。仕事の後に画塾やクラブの仲間達と勉強しながら技法を習得し、現在では東光展や日展を主な発表の場としています。
庄司さんは、市場の人や職人達の飾らない正直な姿にモチーフとしての魅力を見出し長く描き続けてきました。現場に行き朝早くから忙しく立ち働く人々の一瞬の表情や仕草、佇まいを手早く捉えます。また風景画を描く時も写生することにこだわります。実景を観察することで構図や色彩に対する気づきを得られるからです。
「きらびやかで美しいだけのものは、自分は描けない。」自身の価値観を育んできた場所として故郷の風土や暮しの影響は大きく、庄司さんはそれを両親から授けられたもの、受け継いでいくものとして大切にしています。農閑期の冬には、焼いた炭を橇(そり)一杯に積み遠い町まで運ぶ父親を手伝い、夜中に出かけ明け方に帰途についてから学校へ行く、少年の頃にそうした経験をしてきた自分だからこそ描ける絵を描いていきたいのだと言います。
今展は、庄司さんの人物画と風景画17点を二期に分けて展示いたします。