歴代元号で最長であった「昭和」(1926-1989)は、日中戦争から始まった戦時体制、そして敗戦と復興、経済発展とまさに激動の時代でした。足かけ64年を数えたこの間に、私たちを取り巻く生活環境や価値観は、劇的な変化を遂げたといえるでしょう。
そんな中、同時代を生きた写真家たちは、変貌する日本社会の一コマをそれぞれの視点でカメラに収めてきました。とりわけ、子どもたちを被写体とした写真では、日常生活でのいきいきとした表情や、逆境を懸命に生きる姿などを切り取った数多くの傑作が生まれました。社会を映す鏡である子どもたちの暮らしぶりは時代の明暗を浮き彫りにするとともに、微笑ましくも逞しいその姿からは人間の強さや生命の輝きが伝わってきます。
本展は、木村伊兵衛、土門拳、林忠彦など日本写真史に大きな足跡を残した19人の写真家がとらえた子どもたちの姿を通して、戦前から高度経済成長期にかけての昭和の歩みをたどります。昭和から平成を経て、新元号へ移ろうとしている今、私たちの社会のありようを改めて振り返る好機となるでしょう。