「虚心になると自然は近づいてくる」小野竹喬は生涯自然を描き続けた画家でした。75年にわたる画業のうちで画風は変化をしていきますが、自然を見つめ続け、素直に描く姿勢は一貫して変わりませんでした。
竹喬の描く自然は、特別な場所ではなく、樹や山、雲など誰もが見たことのある身近にあるものでした。今回初公開の《内海》は海岸から一艘の小舟が漕ぎ出すところで、穏やかな海と空は、ちょうど竹喬の故郷瀬戸内海の風景を連想させます。島の点在する内海の海岸線は面白く、日本画独特の柔らかで優しい色合いで、長閑で豊かな人と自然が描き出されています。
竹喬と同じく、多くの日本画家たちにとって日本の自然は、表現の源泉です。児玉希望《山湖雨霽》では、山水のモノクロームの世界に日本人が自然に抱く崇高な気分が表され、林正明《峻厳霊峰》は、見渡す限りの山並みが、自然の厳かさを感じさせます。本展では、竹喬をはじめ日本画家が描いた海・山・川・湖などの風景画約90点を展示します。日本画達の感性を通して、日本の豊かな自然にふれ、身近にある自然の美しさを再発見して下さい。