大和文華館では設立以来、東アジア諸国の幅広い古美術作品を蒐集してきました。その中でも中国・朝鮮の絵画コレクションは、両国の長い歴史と文化、風土のもとに醸成された美を通覧できる、充実したものとなっています。
描かれるテーマは、山水画、花鳥画、人物画などがあり、作品のひとつひとつに、その時代の人々に求められ、生み出されたというエピソードがあります。例えば、宮廷を飾るために描かれた画、文人が自らの心情を託した画、そして民衆の売り物として作られた画など、その背景はじつに多彩です。また隣あう両国は、美術においても大いに刺激を与えあってきました。絵画における共通するテーマや表現に、各時代の交流の跡をうかがうことができます。更に両国の絵画は、海を隔てた隣国である日本にも伝わって珍重され、様々な作品が生み出される契機になるのです。
本展観では、かつて室町将軍家の所蔵にあった国宝・李迪(りてき)筆「雪中帰牧(せっちゅうきぼく)図」をはじめ、当館が世界に誇る中国・朝鮮の絵画を一堂に展示します。両国の美の精粋を、作品が生まれた時代の息吹を感じつつ、ぜひご堪能ください。