「桜色」「杜若色」「茜色」-日本の色の名前には、身のまわりにある花や木、景色の名称が多くつけられています。「萌黄色」「瑠璃色」-美しい響きの言葉を耳にすると鮮やかにその色を思い浮かべることができます。日本の伝統色は、季節の移ろいや暮らしの中で見いだされ、古の昔から染色や陶芸、絵画の中に用いられてきました。
伝統的な技法を今に伝える日本画の画材には、現在も天然の素材が多く使われています。支持体には絹や和紙、絵の具には墨や岩絵具というように。特に岩絵具の素材には鉱物や染料が使われているため、自然界の色そのものが絵の中にあらわれることもあり、日本の風土や日本人の自然観を強く反映しているのが日本画という絵画といえます。
平松礼二画伯が日本画に惹かれたきっかけも、陶器に描かれた呉須の青色だったそうです。それから岩絵具の宝石のような美しさに魅せられ、日本画家への道を歩むことになったのです。
このたびの展覧会では、日本画の中で使われる色を取り上げ、四季を彩る和の色の魅力を探ります。