この春、突然、火と氷の島国、アイスランドの大地の一角に、四方を半透明のビニールで覆われた直方体のモノリスが出現した。ひとリが入れるほどの不思議なオブジェの中に、メタリックな衣を纏い、ゴーグルをつけた異邦人がいた。川口珠生だ。手に絵筆を持ち原始、洞窟内で初めて絵を描いたひとのように中から絵を描く。画家は、土地の精霊に誘われ、透明の洞窟から静かに歩み出し、煌めく光の中で、やおらパフォーマンスを始めたこれらの体験を照らし出す空間構成が本展の作品となる。
深川雅文(インディペンデント・キュレーター/クリティック)