浮世絵に描かれた子どもの姿に注目すると、その小さなからだを通して時代の空気を伝えてくれるものに数多く出会います。明治時代の浮世絵には、文明開化によって社会そのものが変化するなか、遊びにも学びにも、力いっぱい生きる子どもたちの姿が描かれています。
西洋の影響を受けて学校教育が始まった明治初期、浮世絵には学校で英語を学ぶ洋服姿の子どもたちが登場します。ここには、世界へ目を向け立身出世を目指すという、当時の理想像を見ることができるでしょう。一方で、まだ街の裏通りには江戸の香りが残っていた時代。明治半ばより江戸懐古の風潮が高まると、江戸に花開いた遊びの文化を受け継ぐ、どこか懐かしく愛らしい着物姿の子どもたちが浮世絵に戻ってきます。
本展では、文明開化の新風と江戸の面影のはざまで遊び、学ぶ子どもたちの姿を、約300点の浮世絵と資料を通して見つめなおします。明治の子どもたちの視覚世界がいかに色彩に溢れていたかをご覧いただくとともに、今も変わらない、成長を見守る大人たちの眼差しを感じていただければ幸いです。