豊かな自然に恵まれ、自然とともにある栃木県の暮らしは、自然から生まれた素材と暮らしから生まれた手わざとによって、暮らしの用や彩りに供する手工芸を生み出してきました。そうした風土に引き寄せられ、あるいは、そうした風土に生まれ、育まれた手わざが近代的知性による創造性を得た時、手工芸を超えて、かつてない創造としての近代工芸が開花しました。栃木の風土が引き寄せて開花したもの、栃木に育まれて開花したもの、これら栃木との関係において開花した近代工芸は、同時に日本の近代工芸を形成する上で、きわめて重要な役割を果たしました。
陶芸の近代から現代までを代表する三人の人間国宝・濱田庄司、田村耕一、島岡達三。20世紀陶芸の到達点・加守田章二。近代工芸としての竹工を確立した飯塚琅斎。鍛金に近代的金属造形への道を開いた三井安蘇夫。近代染色の確立に参加し、染色の用途性も拡大した高久空木。7人の巨匠それぞれの創造的な手わざとともに、それらを育んだ栃木県をあらためて見つめなおします。