ウィリアム・モリス(1834-96)はデザイナー、詩人、思想家、工芸家などさまざまな顔を持ち、19世紀ヴィクトリア朝のイギリスでその豊かな才能を開花させました。産業革命により大量生産品があふれたこの時期、彼は時間をかけた丁寧な手仕事を愛し、自然の美を讃えた生き生きとしたデザインを生み出しました。
モリスは結婚を機に新居となるレッド・ハウスを建設したとき、自身の目指す快適な生活空間には家具や壁紙が欠かせないものだと気づき、木版による美しい壁紙を生み出します。壁面一杯に優雅に広がる草花は、100年以上経った今でも人々を魅了する居心地のよい空間を演出します。モリスはこれまでの、リアリズムに基づいた奥行のある壁紙空間から離れ、平面的な造形の中に鳥や草花を表現し、装飾と自然の新しい関係を追求しました。
本展は、英国有数の壁紙会社サンダーソン社が所蔵する貴重な壁紙や版木など約130点を日本で初めて紹介するもので、19世紀に隆盛期を迎えた、モリス以前からアーツ・アンド・クラフツ運動にいたる英国壁紙デザインの変遷をたどります。