今泉亀撤(1907-2009)は、郡山市片平町に生まれた医学博士で、2004(平成16)年に郡山市名誉市民として顕彰されています。彼は日本最初の角膜移植に成功し、角膜移植法の成立、そして角膜移植のための眼球銀行、いわゆるアイ・バンクの設立に大きく寄与した、まさに「眼の人」といっていいでしょう。
「眼の人」今泉は、独特の審美眼によって多くの美術作品をコレクションしていました。その特徴は、実際に親交のあった作家たちの作品を軸にしている点にあります。それは、東北大学医学部助教授時代に知り合った彫刻家阿部正基に始まり、岩手医科大学教授時代に交友した岩手出身の作家たちから、戦後日本の抽象表現を牽引した猪熊弦一郎にまでつながります。さらに、コレクションにひとつの歴史的な流れを与えるかのように、日本近代美術の著名な作家たち、そして海外ではバルビゾン派やルオー、シャガールなどの作品を加えることでその幅を拡げていきました。
本展は、現在医療法人明信会今泉西病院蔵となっている今泉コレクションの中から約180点を選りすぐり、その成り立ちと魅力を探ります。