新潟県五泉市出身の阿部展也(あべ・のぶや/1913-71年)。瀧口修造との共作詩画集『妖精の距離』(1937年)で一躍注目され、画家としての本格的な活動が始まりました。また、彼は雑誌『フォトタイムス』を主な舞台とする、戦前の前衛写真の運動でも旺盛な発表を行い、日本の写真史においても注目すべき足跡を残しました。
戦中は陸軍報道部写真班員として徴用され、従軍先のフィリピンでは厳しいサバイバルも経験。そして戦後、画壇に復帰した後は、シュルレアリスムからアンフォルメル、幾何学的抽象へと、目まぐるしく画風を変化させていきます。この変化の大きさは、阿部展也という画家の全体像の捉え難さに通じる要因でもあります。しかし、巧みな英語力を買われ、国際的な文化交流の最前線に立つ機会も多かった彼は、世界の新しい美術の潮流にいち早く接し、それらを貪欲に吸収するだけでなく、日本へ紹介する役割も担ったのです。 画家、写真家、評論家、中世墓石彫刻の研究家等々、様々な顔をあわせ持ち、58歳でローマにて客死するまで、世界を所狭しと駆け回った阿部展也。その生き様は、まさに「あくなき越境者」と呼ぶべきものであったといえましょう。
本展は、新潟市美術館の所蔵品を核として、全国各地の美術館や個人の所蔵作品、新出の資料、関連作家の作品で展示構成します。