鹿追町立神田日勝記念美術館は、皆様のご支援に支えられて開館25周年を迎えることとなりました。これを記念して、神田日勝(1932-1970)の代表作《室内風景》(1970年、北海道立近代美術館蔵)が5年ぶりに鹿追に帰ってきます。このたびの記念展は、日勝の画業の集大成とされる《室内風景》を巡って、その作品誕生への軌跡や影響関係をたどるとともに、当館25かんし年の歩みを振り返る機会としたいと思います。
今回の試みとして、神田日勝が室内や家屋を描いた作品の系譜に着目し、画業初期の《家》(1960年)や《飯場の風景》(1963年)から、中期の「画室」連作、そして最晩年の《室内風景》へといたる軌跡をたどります。また本展では、菅前館長(2016年逝去)長年の調査で存在が判明した海老原暎(1942-)の作品《1969年3月》(1969年)を、初めて《室内風景》とともに展示できることになりました。本作は《室内風景》の制作プロセスに関して重要な手がかりを示す作品であり、このたびの比較展示の実現により、その影響関係を目の当たりにすることとなるでしょう。
観る者の心をとらえて離さない《室内風景》の魅力は、当館でも開館以来の25年間、折に触れて語られ、論じられてきました。その変遷とともに「これまで」を振り返りつつ、まもなく迎える没後50年の新たな節目を控えた今ここから、神田日勝芸術の「これから」のあるべき姿を皆様とともに考える場としたいと思います。