20世紀のはじめに生まれ、90余年の生涯を全うしたふたりの画家、小堀四郎(1902-1998)と村井正誠(1905-1999)。
ふたりは同じ時代を生き、奇しくも同時期にパリで学んでいますが、互いに深く交流することはなく、小堀は具像、村井は抽象と、それぞれ異なる表現で創作を重ねました。小堀は1935年の帝展改組を機に官展を離れ、以降、孤高ともいえる道を歩みます。いっぽう、村井は、当時まだ日本では馴染みの薄かった抽象表現の道を進み、難渋しつつも、戦後はモダンアート協会を設立するなど、自ら活動の場を切り拓いていきました。画壇に属さず、作品を売ることもせずに、ひとり制作に打ち込んだ小堀と、画家仲間とともにグループを設立して淡々と作品を発表した村井の生き方は、対照的に見えながらも、共通した時代の陰影を感じさせます。
長年にわたって世田谷にアトリエを構えたふたりの画家の諸作品を通じ、大きな戦争を経験し、価値観が多様化していく社会のなかで、それぞれが独自の美学を語り尽くそうとした創作の軌跡をご覧いただければと思います。
また、小コーナーでは、世田谷に在住し、2017年に逝去した舟越直木(1953-2017)を追悼し、その彫刻やドローイングを紹介します。