幕末の動乱を駆け抜け、維新の原動力となった勤皇の「志士」たち。国事に奔走した彼らは、若手藩士や儒者、豪農や豪商の出身者などさまざまですが、共に漢学の深い教養を身につけ、多くは自ら漢詩文を作り、それを見事な書で表現した、詩人でもあり書家ともいえる一面をもった人々でした。また彼らの間では、技巧よりも描く人間の精神性を重視した「南画」が広く愛好され、中には自ら絵筆をとり、余技として南画風の作品を好んで描く者も現れました。
本年は明治元(1868)年から満150年の年に当たります。これを記念して本展では、長州藩の奇兵隊に加わり、戊辰戦争を転戦した長三洲(ちょうさんしゅう)の絵画、尊王思想に大きく影響を及ぼした『日本外史』の著者頼山陽(らいさんよう)の墨書、維新の三傑・大久保利通から絶大な評価を受けた平野五岳(ひらのごがく)の詩画軸など、激動の時代を生きた志士たちが親しみ、愛した芸術、あるいは自らが手がけた詩書や絵画作品の数々を紹介します。