1950年代末、抽象表現主義への反動として登場した「ポスト・ペインタリー・アブストラクション」の最も創造性豊かな作家として活躍を始めたフランク・ステラは、絵画と空間に対する鋭い問題意識を常に抱えながら、今日まで精力的に創作を展開している。再現的な要素を一切排したミニマル・アート風の1960年代の作品から、70年代初期のレリーフ状の作品への移行、そして70年代末から始まる鮮やかな色彩と有機的なフォルムを組み合わせたバロック的な立体作品へと、その作風は次々と大胆な変貌を見せている。
「ただそこにあるだけで、強く、美しいアート」を目指したステラの作品は、意味や習慣の束縛を楽々と逃れ、色と形と線の奔放で自由な組み合わせによって我々を圧倒し、見ることの純粋な喜びを与えてくれる。
日本でもその全貌を紹介する大規模な展覧会が1991年に開催されているが、今回の展覧会ではそれ以降に制作された最近作も交えて、ほぼ半世紀にわたるステラの創作の歩みを、川村記念美術館を始めとする国内各所所蔵の作品によって回顧するものである。