多田友充はドローイングを中心として様々な表現を展開するアーティストです。油絵具、アクリル、顔料、ボールペン、色鉛筆、パステル、スプレーなどの画材を用いて、線や色の繊細な重なりのあるもの、大胆な存在感のある線で描かれたものなど多様の表情を持つ画面を作り上げます。また、しばしば作品に描かれる言葉は、文字の形と言葉の意味が重なっては離れることを繰り返しながら、やがて見る者を形と意味を超えたイメージへと導きます。それらの作品は、混沌や矛盾の先に見える景色のような静謐さを携えています。
本展のタイトルは、この世界に内在するあらゆることの中からある普遍の一面を提示する一方で、人間が人間として「どう在るか」ということについての問いのようでもあります。
多田は近年、大型のパネルに描いた絵画を多く発表してきましたが、本展では、国際芸術センター青森(ACAC)の空間を活かしたインスタレーション作品を発表します。静寂と力強さが共存する作品は、あらゆることが起こり得るこの世界の底をのぞき込むような、もしくは果てに導かれるような体験をもたらすでしょう。