長野県に生まれた荒井茂雄(1920~)は、幼い頃から絵を得意とし、同県上田市で友禅と日本画を学んだ後、猪熊弦一郎(1902~1993)に師事します。以降、洋画・日本画という区分や一つのスタイルにとらわれることなく、新たな表現への探求を続けてきました。
初期には花や鳥などをモチーフとした油彩画を制作しますが、80年代半ばより、色彩豊かで実験的な抽象表現や、身近な日用品を組み合わせた立体作品を手がけるようになります。そして近年では、自らの作品や浮世絵などのイメージを組み合わせたコラージュに着手するなど、その表現の展開は豊かな様相を呈しています。
一方で、いずれの時期においても、鮮やかな色彩を巧みに操る感覚や、素材やモチーフの意外な組み合わせ、日常の中にあるものへの新鮮なまなざしなど、猪熊の教えを受け継ぎつつ、荒井が確立した固有の精神が息づいています。
荒井は、猪熊ゆかりの地である丸亀市や当館と長年深く関わり続け、2016年度には丸亀市文化振興賞を受賞しました。本展は、時期ごとの代表的な作品、そして97歳にして取り組んだ最新のシリーズをあわせて展示し、その70年以上におよぶ画業を「第二の故郷」丸亀で一堂にご紹介する機会となります。